ゴー宣DOJO

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笹幸恵
2017.8.26 17:28

台湾とワサビ

骨法整体に行った帰り道、

ポレポレ東中野で『台湾萬歳』という公開中の

映画のポスターが目に飛び込んできました。

 

『台湾人生』『台湾アイデンティティ』に続く、

酒井充子監督の台湾三部作の最終章だとか。

しかも最終日っぽい。

これは見なきゃ。

 

というわけで、映画館に飛び込みました。

ドキュメンタリー映画です。

日本統治時代を知る人々に迫った『台湾人生』は、

とても印象的な作品でした。

今回観た『台湾萬歳』は、日本と台湾の過去を基軸としつつも、

「今」をとても大事に生きている人々の日常を映し出しています。

 

元漁師だった張旺仔さん(85歳)は、カジキ漁を引退後、

今は畑仕事が日課。日本語で畑を案内してくれる。

魚が手に入ると、刺身で食べる。

練りワサビをびっくりするぐらい山盛りにする。

もはやワサビが主役かと思うほど。

ワサビでツンときて、「はあー、から」とか言っている姿が

何だかとても愛らしい。

山で伝統的な狩りをしているブヌン族のダフさん、

キョンを仕留め、その場でさばき始める。

ぶつ切りにして食べていたのはレバーかなあ。

これまたチューブの練りワサビを取り出して、山盛り。

どんだけワサビが好きなんだ。

 

映画では、とにかく生き物をさばくシーンが出てくる。

グロテスクだけど、本当は、魚や肉が口に入るプロセスって

こうなんだよなあと思う。

スーパーでパック分けされた肉や魚ばかりを見ていると、

つい忘れてしまう。

生活することは、本来、血まみれになったり

土まみれになったりして、もっと手間がかかることだったはず。

月並みな言い方だけれど、便利さにかまけて、

当たり前の生活を忘れてしまっているんだなあ。。。

と、『台湾萬歳』を観てしみじみ。

 

 

台湾には、日本人として戦争を戦った台湾人もいる。

しかし戦後、国民党軍に徴兵され、40年以上、

台湾に帰れなかった人がいると知って驚いた。

一方で、国民党軍と共にやってきた兵士で、

そのまま台湾の地方の町に住み着いた人もいる。

彼らの孤独を、ブヌン族のカトゥさんが歌にして、

映画の中でも素晴らしい歌声を披露してくれている。

不覚にも泣けてしまった。

 

時代に抗う術もない。

人生は哀しい。

けど、人間はたくましくて、どこか温かい。

そんな酒井監督の思いが伝わってくる映画でした。

 

しかし台湾、やっぱりいいなあ。
ワサビはちょっと苦手だけれども。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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